東京高等裁判所 平成6年(行ケ)194号 判決
千葉県鎌ヶ谷市東鎌ヶ谷3-28-2-107
原告
島田輝夫
訴訟代理人弁護士
後藤裕造
同
滝沢繁夫
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
被告
特許庁長官 高島章
指定代理人
長島和子
同
木下幹雄
同
井上元広
同
関口博
同
土屋良弘
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
特許庁が、平成6年審判第1438号事件について、平成6年6月29日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば、以下の事実が認められる。
原告及び訴外増田寿男は、名称を「テレホンカード有価証券付名刺」とする発明につき特許を受ける権利を共有し、昭和60年8月26日、同発明につき、共同して特許出願をした(昭和60年特許願第185816号)が、平成5年11月22日に拒絶査定を受けたので、平成6年1月19日、共同してこれに対する不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を同年審判第1438号事件として審理したうえ、同年6月29日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年7月27日、原告に送達された。
原告は、同年7月28日、訴外増田から、同人の有する上記特許を受ける権利についての持分を相続その他の一般承継によらずして譲り受け承継したが、この承継について、特許庁長官に対する届け出をしていない。
原告は、同年8月24日、単独で上記審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
2 上記事実によれば、原告の上記特許を受ける権利の持分の承継はその効力が生じていない(特許法34条4項)から、本件訴えは、特許を受ける権利の共有者が、その共有に係る権利を目的とする特許出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に、その取消しを求めて提起した審決取消訴訟であって、共有者の全員によらず、その一部の者のみによってなされたものであることが明らかである。
このような審決取消訴訟は、共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって、審決を取り消すか否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるものといわなければならないから、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当であり(最高裁昭和52年(行ツ)第28号昭和55年1月18日第二小法廷判決・裁判集民事129号43頁、最高裁平成6年(行ツ)第83号平成7年3月7日第三小法廷判決参照)、原告が単独で提起した本件訴えが不適法であることは明らかである。
3 よって、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 芝田俊文)